Tuesday, March 4, 2008

白変印度平巻貝の片歌と前句付




ひっそりと去りぬる稚貝 ほろほろと崩るるほどに積もりゆくもの

ゆっくりと冷ゆる水槽  しろじろと夜のひかりを受け入れるもの

生きながら砕けたる殻  なまなまとかつて命を守りたるもの

卵塊の静かに堅く    ゆるゆると熟す命に水与うもの

閉じこもる色なき殻に  ころころとかつて稚貝と呼ばれたるもの

水草の裏に群がり    あかあかと生くる力を見せつけるもの

掘り難き小石に潜り   くろぐろと厳しき昼を受け入れしもの

日の当たる壁に取り付き ふるふると強き流れにとどまりしもの

歯のあるという口を閉じ するすると暗きよどみを進みたるもの

透明な殻白濁し     すじすじと身のかなしみを刻みたるもの

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